第2章 水色~黒子~
「せっかく買ってきたからって。△△さん、帰り際にわざわざここまで来たみたいよ。たまたま通りかかった時に受け取ったって、伊月くん言ってた」
練習の邪魔になりたくないからと言って、△△さんはそのまま帰ってしまったらしいと、これも伊月くんから聞いたんだけど、と言いながら、カントクは教えてくれました。
そして更に、カントクは。
「だから本当は伊月くん、自分で黒子くんに渡そうと思ってたみたいなんだけどね。さっきまで、あの子が来てたじゃない?」
だから渡せなくて、それで自分が預かったのだ、と、からかうように言われて、僕はカントクの笑顔の意味を理解しました。
(何か、面白がられてる気がします)
気がする…というより、確実に……。
それより、体調が悪いのに体育館まで来させてしまって、△△さんには申し訳ないことをしてしまいました。
明日、△△さんが登校したら、お菓子のお礼と、それから、無理させてしまったことを謝らなければ。
本当はすぐにでもメールしたいところですが、僕は彼女の携帯の番号もメールアドレスも、まだ知りません。
有事の連絡手段として、部員同士はみんな交換しているものですが、△△さんとはまだ…だったりします。
心配なのに、メールの一つもできないのが、何だかすごく悔しい気持ちになります。
それなのに…なんて、子犬を羨ましいと思っても仕方ないと分かってはいますが。
でもやっぱり、何だか羨ましいくらいに二号は……。
「△△さんに好かれてるんですね」
(ちょっと憎らしいです、二号)
そんなことを考えながら帰宅した僕は、桃井さんが現れたあの瞬間、△△さんも体育館に居合わせていたなんて、思いもしませんでした。