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君と生きる未来【Let's天才てれびくん】

第2章 再会


 そうして、こまちまちこさんと話しながら、足湯に浸かっていたけれど、私はふと腕時計の時間に気付いた。
「いけない。朝ご飯を食べて、玄関の掃除をしなくちゃ。こまちまちこさん、またね」
 朝にわざわざ足湯に浸かりに来るお客さんはいないから、早朝の足湯は、こまちまちこさんとのんびり話せる時間だけど、そろそろ家の手伝いをしなくては。今日は土曜日。学校は休みだけれど、やるべきことはたくさんある。
「ええ。またね、風音ちゃん。今夜、露天風呂で待っています」
 こまちまちこさんが、ここの温泉に来ている間だけだけれど、朝は足湯、夜は一緒に露天風呂に入るのが、初めて会った時からのこまちまちこさんとの待ち合わせの時間。今夜もいっぱい楽しい話をしよう。
「今夜もお話しましょうね」
 優しく笑って、こまちまちこさんは手を振って、見送ってくれた。

 朝食を取った後、旅館の玄関を掃除しながら、大野課長を二度目に見送った時のことを思い出す。季節は違うけれど、あの日もこんな晴れた朝だった。
「大野課長、元気にしてるかな」
 未来人なんだから、『現在形』はおかしいんだけど。
 でも、そう、こまちまちこさんが指摘した通り、大野課長……大野拓朗さんは私の初恋の人だった。
 私がこまちまちこさんのように長生きだったら、大野課長が生まれるまで、ずっと待っていられるのに。出来ることなら待ちたい。五郎さんを待ち続けたこまちまちこさんのように、また大野課長に会えるまで、いつまでも待っていたい。
 でも、それは無理だから、この想いはこまちまちこさんに託そう。いつか、こまちまちこさんが未来の大野課長に会った時、私のことを話してくれたら、それでいい。
 そう思って、掃き掃除を終えた時のことだった。
 頭上が曇った。……曇った?
 思わず、上を見た私はあんぐりと口を開けた。間近で見たのは初めてだけど、ずっとテレビで見て来たから分かる。第5やたがらす丸だ。第5やたがらす丸が、旅館の上空に浮かんでいる。
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