• テキストサイズ

スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第15章 明日もキミに恋をする







「―――はい、カットー!!お疲れ様でしたー!!」


監督の声に、スタッフたちから次々と声が上がる。

名残惜しさを残すようにして、唇をそっと離せば。

零の大きな瞳と目が合って。



「………ねえ、零」

『うん?』



―――もう、意地悪なんてしないから。

これだけは、言わせてよ。

これで、最後にするからさ。





「………ずっと、ずっと……好きだったよ」





ボクはまだ、キミを綺麗な思い出になんて出来てないけど。

キミの前では、思い出になったフリをするよ。


キミがちゃんと、前に進めるように―――。



零は大きく目を見開いてから、やがて、とても綺麗に笑った。



『………私も……ずっと好きだったよ、天』




その言葉が聞けただけで。

その笑顔が見れただけで。



ボクの想いも、あの時の選択も、決して無駄なんかじゃなかったんだって

報われた気がした。





どうしてかな。

キミへの想いを断ち切りたいはずなのに

忘れたくないと、こんなにも強く願ってる


キミ越しに見る鮮やかな景色も
頬を伝う涙の熱さも
胸をくすぶる温かな感情も


キミが教えてくれた、キミが魅せてくれたものすべて

目に焼き付けて、記憶に刻んでおきたいんだ。




きっとボクはまだ、前には進めないけれど。

前に進んでいくキミの背中を、押してやることくらいはできるから。



世界で一番幸せにする―――その約束をボクは守れなかったけど

きっとあの人は、その約束を叶えてくれるよ。





キミとキミの大好きな人の歩いていく道が

世界中の誰よりも、幸せな道でありますように。






――――最高のプレゼントをありがとう、神様。





透明に澄んだ秋の空から降る光がふと、差し込んだ。
それはまるで二人を照らすように、純白の衣装に反射していつまでもきらきらと輝いていた。

/ 552ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp