第10章 同い年
結局それから数日間、私は高熱を出して医務室で寝込んでしまった。
幼馴染を失ったショックと、壁外調査での疲労が重なったのだろうと、医務室の医師には言われた。
でも、新兵は入団してから数ヵ月経つと体調を崩す者が多いそうだ。
少しずつ兵団の生活にも慣れてきて緊張の糸が緩んだ時、ふとしたタイミングで体調を崩してしまうらしい。
言わばこれは、新兵にとってはお決まりの試練のようなものだということだ。
入院中は、暇をみてはペトラやオルオ、ナナバさんやゲルガーさんがお見舞いに来てくれて、寂しさを感じている暇もなかった。
ペトラとオルオは、ウォール・ローゼ領カラネス区の出身で、幼馴染ということだった。二人共12歳で訓練兵に志願し、15歳で調査兵団に入団した。
南方訓練兵団出身だったライデンとは、そこで知り合ったらしい。
「東方訓練兵団の同期もいるけれど、何人かはすでに亡くなっているわ…」
そう言ってペトラは、懐かしむような悲しげな目をして、窓から差し込んでくる太陽の光を見つめた。
「ライデンは、すげぇ優秀で良いヤツだった。俺は何度もあいつに助けられた。
辛い状況でも、あの太陽みたいな明るい笑顔に励まされてたんだ」
オルオの目は少し赤くなっている。
私は、私の知り得なかった彼の数年間を垣間見たような気がして、改めて彼の優しい人柄に思いを馳せた。
(ライデン…あなたの最期がどんな風だったかは、私には分からない。でもきっと、最後まで勇敢で優しい人だったのだろうと…きっとそうだったと思うよ。
今はどうか安らかに眠って。
いつか私もそっちに行ったら、今度こそ私の顔を描いたカラクリ絵をあげるからね。自分の顔はよく分からないから上手く描けないかもしれないけど、ライデンだったら、いつもみたいに「うめーっ!」って喜んでくれるかな)
窓から差し込んでくる明るい太陽の光。
その中でライデンが笑ったように思えて、私はまた、涙を流したのだった。