第7章 穏やかな日
夕暮れどきの、オレンジ色に染まる街を歩いていく。
「今日はありがとう、ライデン。おばさんに久しぶりに会えて、本当に嬉しかったよ」
そう言って隣を歩くライデンの顔を見上げれば、またライデンはポリポリと頬を掻いた。
「いや、こちらこそありがとう。お袋、すごく喜んでた。今日は良い日になったよ」
穏やかな笑みを浮かべるライデンの横顔を見ながら、ふと、私は今ならあのことが聞けるかもしれないと思った。
再会した時からずっと気になっていたこと。
「ライデンがさ、調査兵団に入った理由って何?確か昔は、駐屯兵団に入りたいって言ってなかったっけ?」
「…あぁ、確かにそう思ってた。だけどあの日、超大型巨人の襲撃を受けて、親父が死んで、お袋が足を怪我して…たくさんの人が死んで思ったんだ。
守るだけじゃ、護れないんだって。壁を守るだけで戦わなければ、大切な人は護れないって気づいたんだ。
俺は、母さんを、お前を、みんなを護りたい。だから調査兵団に入ったんだ」
こちらを見下ろしているライデンの真剣な瞳と目が合って、私は、彼が訓練兵団に入団する時に言った言葉を思い出した。
『俺、家族のことも、お前のことも守れるような、立派な兵士になってみせるから!』
あぁ、ライデンは昔から変わらない。いつまでもあの頃と同じで、真っ直ぐだ。幼馴染として本当に誇らしく思う。
いや、小さい頃からいつも一緒に過ごしてきたライデンは、きょうだいも同然の存在だ。友人というより、家族なんだ。
「次の壁外調査、絶対に生き残ろうね。それで、また一緒におばさんに会いに行こう」
そう伝えると、何故だかライデンはちょっと眉を下げて困ったような顔をした。
そして少しだけ間を置いてから、ニカッと太陽のような笑顔を浮かべた。
「絶対だぞ」
夕日に照らされたライデンの笑顔は、今までに見てきたどの顔よりも格好よく見えたのだった。