第7章 穏やかな日
次の壁外調査に向けての訓練が続く中、数少ない調整日にライデンと一緒に出かけることになった。
目的は、ライデンのお母さんに会いにいくこと。
「ごめん、待った?」
兵舎の門の前で腕組みをして立っているライデンに、私は手を振りながら駆け寄っていった。
待ち合わせの時間よりも早く来たのに、ライデンの方が早かったみたいだ。
「いや、俺も今来たとこだから。久しぶりの休みなのに、付き合わせて悪いな。
でも、ラウラに会ったらお袋も喜ぶと思うから」
「全然気にしなくていいよ。私もおばさんに会いたかったし、むしろ誘ってくれてありがとう、ライデン」
背の高いライデンを見上げて返事をすると、ライデンはフイと視線をそらして、ポリポリと頬を掻いた。
昔はこんな仕草しなかったと思うけど、4年も会わないでいたら、私の知らない一面も出てくるのかもしれない。
「じゃ、行くか」
歩き始めたライデンを追いかけて、私も足を踏み出した。
ライデンのお母さんは超大型巨人の襲撃時に足を怪我してしまい、それ以来杖をつかないと歩けなくなってしまったらしい。
歩きにくい足のせいで外出することもめっきりと減って、今は一日中部屋の中で過ごしていることが多いという。
おばさんは今、トロスト区に住んでいるお兄さんの家にお世話になっている。つまり、ライデンのおじさんだ。兄妹仲は昔から良かったので、快く受け入れてもらえたそうだ。
「お袋はさ、俺が遊びに行くといつもニコニコ楽しそうにしてくれるんだけど、おじさんの話では、普段はあんまり笑わなくて、一日中ぼんやりとしていることが多いらしいんだ」
おじさんの家に向かう道すがら、ライデンがポツポツと話してくれた。
「そっか…」
私は少し俯いて、踏み出した先にあった小石をコツンと蹴った。