第18章 似顔絵
巨人の捕獲に成功してからのハンジ分隊長の巨人研究への熱中ぶりは、またさらに激しさを増した。
もともと少ない睡眠時間をさらに削って昼夜問わずに研究に没頭しているので、見かねた団長やモブリット副長が「少しは休息を」と諌めたのだが、分隊長は全く聞く耳を持たず(聞こえていない?)、相変わらず毎日巨人たちに声をかけて回っていた。
私たち班員は、いつか分隊長が過労で倒れてしまうのではないかと心配していたけれど、そんな日々が一日また一日と続いていくうちに、それは杞憂だったのではないかと感じるようになった。
なぜなら、ハンジ分隊長はやつれるどころか日増しにハツラツと元気になっていくばかりで、今までに見たことがないくらいいつでもご機嫌だったからだ。
巨人研究が何よりも楽しいと語っているのを以前聞いたことがあったけど、ここまでだったとは…。
むしろ、分隊長の身の回りのお世話をしているモブリット副長の方がやつれてきている。副長の頬が少しこけているように見えるけど、倒れたりしないだろうか…。
でも実は私の方も、ハンジ分隊長ほどではないにしても睡眠時間を削って絵の制作に取り組んでいた。
今は巨人研究が最優先事項となっているので、新兵がやらなければいけない日々の雑務は特別に免除してもらっており、そのおかげで思う存分絵が描けている。
巨人を捕獲した日の夜から、私はベッドのある共有部屋には戻らずに、このアトリエでずっと寝泊りをしている。
もちろんこの部屋にベッドなんてないから、椅子をいくつか並べて、その上で小さく丸まって眠っている。ちょっと身体は痛いけど、不思議と疲れは少しも感じない。
ハンジ分隊長からの指示は毎日どんどん出て来るから、少し寝ては絵を描いて、巨人の観察をして、また絵を描いて…と、その繰り返しだ。
ここしばらくは完全に絵が中心の生活をしているから、時々食事を食べるのも忘れてしまうことがあるけれど、お風呂だけは欠かさずに入っている。