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泡沫人魚【狩人】

第11章 オカノウエ×ノ×ニンギョ


幾日。幾月。幾年。
どのくらいの時間が経過しただろうか。
久し振りに訪れた小さな町は相変わらず、こじんまりしてて穏やかな町。



「………」



ただ少し前とは違う。暖かい地域だったハズが積雪の地になってしまった少し前とは違う。元の暖かい地域に戻っているのだ。
男は町を素通りし、緩やかな森を抜けて丘を目指す。
凄腕の武器職人で優秀な情報屋の家がある丘。しかもそんな凄い人が実は人魚で…しかも海を統べる女帝だったのだ。



-ふわっ-



と香る甘い匂いと海の匂い。
森を抜けて丘を登ると聳え立つは氷の城壁。少し前に来た時は死体だらけで酷いもの…男にとっては絶景だったのだが氷に刺さる死体も氷漬けにされた死体も見当たらない。



『運命、かな』

「!」



凛とした声が響く。声のする方を見ると氷の城壁に手を触れる女性。藤色の絹糸の様な綺麗な長い髪の毛が氷による光の反射でキラキラと輝く。
そんな髪の毛をふわふわ、サラサラ揺らしながら此方をゆっくりと振り向いた。



「………!」



真っ白な肌。宝石の様な深紅の瞳。例えるならルビー。優しく垂れた目尻はまだ少女の様なあどけなさを残しているが弧を描く口元は妖艶。少し伸びた背。目を見張る滑らかな曲線は艶かしいボディライン。
少し大人になった様だが自分達の良く知る人魚がそこに居た。



『あんまり変わんないね』



小さく笑うと触れていた氷を優しく撫でる。すると結晶の様に粉々になって消えるとその中から現れたのは彼女の職場。彼女の家。



『貴方は…どうして此処へ?』



何て愚問をするんだ、と男は肩を竦めると彼女との距離を詰めて、その胸…心臓を指差す。



「チェリーの、心を、盗みに」



そう言ってのけると、チェリーと呼ばれた女は長い睫毛を伏せながら困った様に笑う。



『覚えてたんだね』



その深紅の瞳に男を写すと不敵な笑みに変わる。



『その挑戦、受けて立とう』



きっとまた…人魚と彼等のお話は始まるのだろう。






























~FIN~





















→あとがき
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