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泡沫人魚【狩人】

第8章 ニンギョ×ト×ジョテイ


その部屋の端に居る人物に目を見張る。
両手を手錠で拘束され吊るし挙げられてるその腕は傷だらけ。亜麻色の絹糸の様な長めの髪の毛で大事な部分は隠されているが上半身には何も纏って無くその身体も生々しい傷が絶えない。大きな水槽に浸かる下半身は脚では無く鮮やかな尾鰭。固く閉ざされた左眼の大きな傷。霞んだエメラルドの瞳は生気が無い。



『マーミィ…姉………?』

一同「!?」

「………チェリー?」



血の滲んだ唇が動く。





※※※





『マーミィ姉!』

「駄目!触らないで」

『!』

「この水槽と手錠、高圧電流が流れてるの」

一同「?」



傷だらけでも美しく微笑む目の前の人魚に固唾を飲む。



「私も…もう永くは無いわ」

『そんな…』

「………おかしいわね?チェリー、貴女子供に戻った?」

『これ、本当じゃない!どうしたら戻れる?』



その言葉に片目を見開き小さく吹き出す。



「まさか貴女…禁忌犯したの?」

一同「禁忌?」

「私達人魚は…貴方達人間にとって不老不死になり得る薬であり…お金儲けにもなり得る道具にもなる」

「ちょっと待って私達、って…」

「どんな経緯か知らないけど…貴方達が守ってくれてるこの子は………チェリーは私と同じ人魚なの」

「マジかよ!」



フィンクスの突っ込みに優しく微笑むと愛おしげに目を細める。





※※※





人魚の鱗や血は人間にとって治療や再生効果を高める薬。でも人魚自身がそれらを口にするのは禁忌。どんな事が起きるか分からない。



「でも陸に上がった人魚は誰に見られるかなんて分からないから無闇に海になんて入れない。結果、海水分が不足して人魚本来の能力が使えなくなるの」

「人魚本来の力…天候か」

「そう。でも天候を操れる能力を持つ人魚も稀なんだけどね。それよりももっと稀少なのは生きるのに必要な五行を操る能力を持った人魚」



それらを扱える人魚は上級人魚と呼ばれていて唯一陸に上がる許しを貰える階級。もし悪い人間に捕まったとしても自分で何とか出来るのでは無いかと言われている階級。
陸に上がった人魚はそうした本来の能力が弱ってしまうが弱った能力を強制的に引き戻す術が一つだけある。



「自らの一部を食す事」

一同「!?」

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