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泡沫人魚【狩人】

第6章 ニンギョ×ノ×キキ


チェリーの記憶の手掛かりになるものも無い。寒さで体温が下がり体力も奪われる事も考慮して一度アジトに戻ろうかと話し合ってたところだった。



「わぁ!凄いなぁ!暖かい地域なハズなのにここだけ北極みたいだ!」

一同「?」


飄々と後ろから声を掛けてきたのは若い男。すらっとした細身の身体。柄物の派手なスーツ。手に持っているのは香水の瓶。



-どくん-



小さな鼓動が大きな音を立てる。



-ぎゅっ…-



「!」



すぐ近くに居たフェイタンのマントの裾を握り締める。俯いて居るから表情は見えない。だけど怯えてるのは見るからに分かった。



「貴方達も観光ですか?」

「…観光?ふざけてるか」

「もしかしてご存知無いです?この近辺には人魚が住んでるって噂」



長めの前髪を耳にかけると血色の悪い薄い唇を歪めて横目でこちらを見る。



「人魚って天候を操る力を持ってるんですよ。ここだけ異常気象。そしてこの丘から海も見える…確信付いてると思いません?」

「へぇ…とても詳しいのね」

「この丘に住んでる人が情報屋だと聞いて何かご存知無いかと思って聞きに来たのですが…この通り氷の城と死体しかない。情報屋さんは…居ないのかな?」

一同「………」



おかしい、と思った。確かにチェリーは優秀な情報屋だ。でもそれを知ってるのはほんの極僅かなハズ。基本は武器職人なので常連、またはそれらからの紹介状が無いと情報屋としての顔は知られない。つまりは一見が情報屋のチェリーを訪れるのは変な話なのだ。



「観光でないなら何故貴方達はここへ?」



狂気的なニヒルな笑みがチェリーに向けられる。





※※※





ぞくぞくと背筋を悪寒が走る。気温のせいじゃない。何がこんなにも怖いのか分からないけど頭の奥で警鐘が鳴っている。



「どうしたのかな?とても顔色が悪い様だ」

一同「!?」

『!!!』



何故ここへ?と聞かれた瞬間。一瞬で懐に入られ、俯くチェリーの顔を覗き込む。スーツのポケットから飴を出すとそれを差し出す。



-ひゅっ…-



と風を斬る音が二つ。一つは飴を真っ二つにし、一つは男のスーツを切り裂く。



「おっと」

「テメェ…何者だ?」

「このガキに近付く許さないよ」

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