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【M×N】インターホンはお静かに

第1章 相変わらずな俺ら





小走りで人混みを通り抜けて、
角を曲がった瞬間、思いっきり誰かとぶつかった


"いってぇ"と唸りつつ、"スミマセン"と顔をあげると



視界に飛び込んだその姿に、息が止まるかと思った



少女マンガみたいな再会も、コノヒトが相手だと自然に思える



「え…?

ニ…ノ…?」



目を真ん丸にした先輩が、みるみる笑顔になる

なんにも変わらない、相変わらず眩しい笑顔



「こんなとこで!?久しぶりじゃん!」

「ホント久しぶりですね」



つられるように笑ったけど、

頭を掠めた、様々な記憶




初恋だった

初めてのキスもした

それは触れただけの一方的なものだったけど

きっと一生忘れない

叶わないと、わかっていながら伝えた想いも

後悔なんかしていない



だから今、
こうして真っ直ぐに前を向ける



「先輩はデートですか?」

「…あ、うん。

そう、なんだ」


照れたような、ちょっと申し訳ないような、遠慮した表情に


思わず、ふふっと笑った



やっぱり優しいね

そんな気遣わないでいいのに



「俺もね、デートなんですよ」

「え…?そなの?」

「そんな驚きます?
ちょっと別行動中なんですけど。
先輩に紹介したかったなぁ♪ビックリしますよ」

「ビックリ?」

「年上なんですけどね」

「わ!年上なんだ?」

「そう。美人で料理上手だし」

「へぇ~」



感心したように声を漏らす先輩が可笑しくて

俺も調子に乗る




「その上、俺のことが大好きでたまんないみたい」

「そうなんだ(笑)」

「そうなんです(笑)」




俺、笑ってんな

うん。ちゃんと笑ってる



こんなに普通に…
胸も、苦しくないよ




「そろそろ行きます。
また野球部顔出して下さいね…そん時、紹介しますよ」

「へ?」

「じゃ、また。先輩」




手を振って別れると
先輩も同じに振り返してくれた


自分でも不思議なくらい穏やかだ


ゲーム売り場に向かう足取りも、自然と軽くなる









「お待たせ。
売り切れてなかった!」



無事買えたゲームを、
袋を持ち上げアピールすると


センセは笑顔で、喜んでくれた






ね、

上手く伝えらんないから、
あえて言わないけど




センセがいてよかったよ



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