• テキストサイズ

【M×N】インターホンはお静かに

第5章 イロナキセカイ


.




「驚いた。

電話にも出てくれないと思ってたもの」




隣り合わせのバーカウンターで
琥珀色の液体を傾けながら、彼女が微笑む




「タイミングだよ。
誘ってくれるなら、誰でも良かった」

「ふふっ、それでもいいけど」





自分で言っておきながら

それでもまだ、迷いは消えない

当たり前か


嫌いになったわけじゃないんだから





「ねぇ、潤?
私と会うなんて、あの子はいいの?」



悪戯に笑って、俺の顔色を伺ってる

アイツの存在なんて、気にしてないだろ

昔っから、駆け引き染みた事は言うけど




基本、相手の事なんか気にしてない


欲しいものは絶対に手に入れたいって、自分勝手なタイプだ






「……別れた」




グイッと、グラス半分ほどのアルコールを流し込む




数秒の間


"嘘でしょ"って、信じてない素振りで話し出す



「どうして…?
あの子から?だからイライラしてるの?」

「違うよ。
いろいろ面倒だからな」

「面倒って…それなら最初から、手を出す相手じゃないじゃない」

「…それはそうだけどな…」

「もしかしてあの子……話したの?
もう。ホントバカ正直」

「……」





言葉の意味がわからない



「アナタ、意外と束縛するものね。
浮気なんて許せないか」

「……」

「元々、そんなつもりなかったのよ?
でも、ほら、あの子可愛いじゃない」




意味深に笑う唇を見つめながら、


まさかと思う




「…綾子、お前」

「よく躾たわねぇ。
私も年下探そうかしら」



お代わりのシャンパンを美味しそうに口に含んで

……開いた口が塞がらないとは、まさにこの事で




「私も楽しんだから、
ふたりの秘密にしてあげるつもりだったのになぁ」


苛立ちともどかしさが
シャンパンの泡みたいに、次々と沸き上がる


秘密にしてあげるつもりだったとか言いながら、すげぇ楽しそうだし




「綾子。お前、オシャベリじゃなかったら、
もっとイイ女なのにな」

「ちょっと!?なにそれ!!」




わざとらしく大きなため息をついて

テーブルに置いた煙草をポケットに突っ込み、立ち上がった





もう関係ない事なのに、

許せない俺自身が、存在してた



.
/ 76ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp