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【M×N】インターホンはお静かに

第2章 夜の影






記憶と同じ煙草と香り



しばらくぶりにやって来たBARのカウンターで、


まさかまた、ふたりきりで会うなんて、思ってもなかった







「貴方の部屋でも良かったのに?」

「冗談。どうして、部屋に入れなきゃなんねーんだよ」





キツイ言い方にも、全く懲りてない

余裕の笑みを浮かべたまま







「で、なんなの?
話があるって。

忘れ物なんて、……お前の嘘だろ」

「あら(笑)」






みんなで押し掛けて来た日




後から戻って来たコイツは、
忘れ物をしたからと、インターホン越しにそう言った




それが原因で、部屋を飛び出したカズ


そして、そう言いながらも


彼女は部屋に来ることはなかった





まさかだとは思うけど……


タイミング的にさ?



カズと何か、あったんじゃないよな?







「オマエさ……」

「可愛いわね。彼」






意味深な笑み

一気に込み上げる嫌な予感




カクテルグラスに口を付け、揺れるバイオレットを見つめた






「大事……なんでしょ?」





長い髪を耳に掛け、窺うような目線






「な、に…、言ってんだよ……」

「相変わらずね」





確信を得たような表情と言葉に、


思わず、彼女の目を睨んだ






「すぐ顔に出るんだもの。

アノコのが、もうちょっと上手に出来てたわよ」


「何が……言いたい?」






息を飲むと、口内に広がるジンが

喉を焼けつく









「可愛い生徒だものね。


泣かしちゃ可哀想よね?」


「……」

「それとも、そんな顔がヨかったりするの?

図星?

やだ、見たいかも。あの子が泣いてる顔」






クスクス笑ってはいるけど、

その瞳の奥に、冗談なんて含まれてない





気心も知れた仲だ


行動も考えそうなことも、大体予想がつく






「お前…、なに企んでる?」

「人聞き悪いわね(笑)

私はね、ただ……」






言う前からわかってた



それはきっと、
飲める話じゃない



だけど…



叶えなければ、
すべてがなくなってしまうかも知れない







「簡単よ。

ただ昔みたいに、会いたいって言ってるの」







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