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お気に入り 【黒執事】

第10章 死神さん


部屋を出て、私は街に行った。新しい食器を買いたかった。


「…」


しばらく悩んだ末、お皿30枚、カップ10個を買って、お屋敷に届けてもらうことにした。


「…!」


狙ってきたわけじゃない。ただ、偶然前を通った。


「アンダーテイカー。」


気づけば葬儀屋の前で止まっていた。

ドアノブに手を伸ばし、ドアを開けた。


「…アンダーテイカー?」

「おやおや、しばらくは来ないかと思っていたんだけど……来てくれたのかい?」

「…死神さん。」

「…」

「私の過去を知りたいの。」

「……はぁ…。」


私は通さない。と言わんばかりに背後でドアを閉めた。


「…ナツキ。小生が君の過去を教えたくなかった理由の一つだよ。」

「え?」

「君は一部の過去を知った。それだけでも君は、過去のことを整理するのに必死だろう?なのにもっと知ろうとするのは」

「別に、必死じゃないよ。」

「…だとしても、小生は君の過去を」

「なんで隠すの?私の過去なのに。」

「今の君には、とてもじゃないけど、刺激が強すぎる。それに、小生の口から言ったところで、君が信じる確率は、0に近いんだよ。」

「っ…そんなことない……私は」

「ナツキ。」

「…何?」


少し間があいた。


「…じゃあ仮にもし、小生が、こんなに溺愛している君を殺した。と言ったらどうするんだい?君は信じられる?」

「!…そ、そんなの…信じられるわけ…」

「だろう?」

「っ…。」


何も言えなかった。自分の中でも、何をそんなに焦っているのか、よくわからない。
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