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魔王様の日常

第10章 魔王の過去と使命


魔王が生まれたのは1024年前。
魔王様は“魔人”で、魔人の街に生まれた。
魔人は長寿なことと身体能力や頭脳が人間より少し優っている以外は人間と一緒だった。

魔人は人間に危害を加えることはなく、大昔は助け合いながら共存していたこともあると言う。
父も母も温厚な人で魔王は暖かい家庭でひだまりのような子供時代を過ごした。

だが、その幸せも長くは無かった。
魔王が750歳、人間でいう15歳になった頃。
魔王の体内から“悪魔”の血が見つかった。

悪魔は魔人の中でも稀な存在。
他の魔人と違い、身体能力がずば抜けて高い。
母親のお腹の中で突然変異で“魔人”から“悪魔”に変化する。

悪魔は災いをもたらすものとして忌み嫌われてきた。
魔王の場合もそう。
父と母は魔王を家から追い出した。

追い出され、頭の整理が追いつかぬままに歩き出した魔王は、住んでいた村から遠い、何も無いところでついに倒れた。
それを拾ってくれたのが、今住んでいる館の先代で、彼も“悪魔”だった。
拾われた時魔王は750、先代は1300歳ほどだった。

魔王はこの館に住むようになり、先代と兄弟のように束の間の楽しい時間を過ごした。
先代から悪魔の使命についても教わった。

悪魔の使命は姫をさらう事。姫をさらえば勿論大軍が押し寄せてくるはずなのだが、そうではなく必ず勇者が一人でくる事。
そうしたら逃げずに戦うこと。

どうしてと問うと、先代は「そうすることによって世界が保たれる」というのだ。
それしか教わっていなかったが、魔王はその光景を実際に目撃することとなった。
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