第2章 残酷
視界が白く戻っていく。私が目を開けると、そこには鬼殺隊の青年がいた。
「……起きたか…」
最初はぼんやりとしていた頭だったが、すぐに兄や姉のことを思い出し慌てて起き上がる。辺りを見渡すと、すぐ近くに2人は倒れていた。姉は首を切られておらず、私はホッと胸を撫で下ろすも、警戒するように青年に視線を戻す。
「……銀の髪に、青みがかった異国の瞳……行方知らずとなっていた娘だな」
青年の言葉に無意識に唇を噛み締める。やはり知っていたか…。青年はじっと私を見て、そして顔を逸らす。
「…お前が何を考えているのかは知らないが、報告はさせてもらう。…逃げるだけでは何も変わらない」
「……分かってる」
どうやら無理やり連れ戻すということは無さそうだ。私は兄の所へ駆け寄った。兄も姉も気絶しているようで、すぐ目を覚ますだろう。
「………うっ…」
「お兄ちゃん!?」
やはり兄は丈夫だ。兄が目を覚ましたのを見て、青年が口を開く。
「狭霧山の麓に住んでいる鱗滝左近次という老人を訪ねろ。冨岡義勇に言われて来たと言え」
そして、青年は一瞬のうちに気配が無くなってしまった。兄は呆然としながら、それを見送ったあと私と姉を抱きしめた。
「……お前達は俺が絶対に守るから…禰豆子…幸子…!!」
その強い力に姉が目を開ける。いつの間にか姉の口には竹がくわえさせられていた。冨岡義勇というあの鬼殺隊の青年がほどこしたのだろう。私も彼らを強く抱きしめた。
「私も頑張るよ!! 絶対にお姉ちゃんを人間に戻そう!! 絶対に!!」
そして、私と兄は少し泣いた。泣きながら、3人で手を引き家まで戻った。
「………いってきます」
冷たくなった皆の遺体を土に還し、手を合わせる。しばらくして、兄は私と姉の手を握った。
「…行くぞ」
私は頷き、そして最後に振り返る。私の居場所…温かい居場所…。私は再び泣きそうになり前を向いた。もうあの温かさは戻ってこないのだと…悴んだ手で姉と繋ぐ手を繋ぎ直しながら私は目を軽く閉じた。