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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第3章 初めての巡回-ジユウ-



「そっちの方が絶対にいいと思う!な、翡翠?」



「ええ、そうですよ。それに最近は素足を出して歩いている女性も見かけますし、気にすることないですよ」



「…そ、そうですか」



「気にしない気にしない。
ところで滉はまだか?」



「あ、噂をすれば。来たみたいですよ」



「…ふぁ。…おはよ」



小さな欠伸をしながら鴻上さんが歩いて来た。



「あれ、別に俺、遅刻じゃないよな」



「違いますよ。ただ今日は新人さんがいるんで、何となく早く来てしまって」



「ああ、そうだった」



「おはようございます、鴻上さん」



「おはよう」



「よし、揃ったな。じゃあ今日は彼女の初日ってことで全員で回るぞ」



「(さて…気を引き締めていかないと…)」



またボロが出るのを恐れた。不用意な発言は避けないと、あの時みたいに冷や汗を掻いてもう誤魔化しが利かなくなるかもしれない。



「あ、待った。厄除け厄除け」



紫鶴さんがいきなり袂から火打ち石を取り出し、数度鳴らした。



「はい、これで今日は無事に行って帰ってこられるよ。ちょっと古臭いけど、初日だし縁起を担ぐのもいいでしょ」



「私も紫鶴さんにやってもらったことがあるの」



「そうなんだ。紫鶴さん、ありがとうございます」



そして私達は揃って巡回に向かった。



「(この時代に来た時は不安に押し潰されてどうしようかと思ったけど…こうして外に出ていろんなものを目にすると、本当に映画の世界にいるみたい…)」



高いビルやショッピングモール、もちろん遊園地や水族館などはこの時代にはまだ存在しない。だからこそ全てが新鮮に見えた。



「(元の世界での私は、どうなっているんだろ…)」



階段から突き落とされた後、私の身体は無事なのか、それとも生死を彷徨っているのか。それを知る者は、誰一人いない。



「何か珍しいものがありますか?」



隣を歩く星川さんに尋ねられた。



「この辺りは来たことがないので色々目移りしちゃって」



「そうなんですか。立花さんは何処に住んでいたんですか?」



「ギンザです」



「ギンザ…高級住宅街が多いですよね」



星川さんの質問に曖昧な笑みを浮かべて返す。



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