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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第2章 新しい居場所-フクロウ-



「ブレザー?」



「女学校はセーラー服じゃないのか?」



ひゅ、と喉の奥が鳴った。



「(今、何を…口走った?)」



嫌な冷や汗が米神を伝って流れる。



「その…ブレザーって、どんな制服なんですか?」



星川さんの疑問が更に私を追い詰めた。緩んでいた緊張が一気に張りつめ、規則正しく脈打っていた鼓動が急速に速まる。



「え、えーと…上着やジャケットの一種で、尾崎さん達が着ている制服に似ています。それと少し説明不足だったんですが…女学校時代はセーラー服でしたよ。私が言ったのは中等科の頃の話です」



ツグミちゃんとは女学校が一緒だったし、下手に嘘をついてもバレる。でもそれ以降の事は誰も知らないから私が中等科に通っていたと嘘を吐いても、ブレザーを着ていたと嘘を吐いても、調べられない限りは絶対にバレない。



引き攣った笑みで内心焦りながら誤魔化す。



「へぇ、そんな学校もあるんですね」



「じゃあ中等科はそのブレザーってので、女学校の時はセーラー服だったんだな」



「そうなんですよ」



どうやら怪しまれずにフラグを回収できたようだ。私の言葉に納得したのか、みんなは笑っている。このチャンスを逃すまいと、私はすぐに話題を逸らす。



「そういえば巡回するのってどの辺までなんですか?」



「基本的には府内の管轄地区の書店のみです。ここが本部で、他に幾つか支部もあるんで。そういう細かい部分にも追々慣れていけばいいですから」



「私もまだ不慣れなことが多くて。でも詩遠ちゃんと一緒に働けるのは嬉しい」



「私もツグミちゃんと一緒に働けて嬉しいよ」



私達は笑い合って、お寿司に手を伸ばした。



「立花、エビ好き?食べる?」



「好きです」



「皿貸して。俺の方が近いし取るよ」



「ありがとうございます」



お皿を渡すと尾崎さんは新品のお箸でエビを摘んで取ってくれた。



「隼人、僕のも取っておくれ。マグロがいいな」



「紫鶴さんは自分で取ってください」



「彼女には取ってあげたじゃないか。…もしかして"彼女の"だから取ってあげたのかな」



「深読みし過ぎですよ」



尾崎さんは笑いながら否定していた。私はエビを口に含み、その美味しさに感動するのだった。



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