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君色に染まりて【イケヴァン長編◆裏】

第1章 首飾り


「――アズリ………!」

カフェにて紅茶とタルトを挟んでいたとき、ふいに名を呼ばれ。


「ぁ………ごめんなさい。なに?」


「何、じゃないよ。貴方また上の空だったじゃない………。」


「ご、ごめんなさい」

苦笑しつつ、祖母から譲られた首飾りにそっと触れる。


(おばあちゃん………。

あなたはどうして、あんな事を………?)



病床に臥す祖母は、躯となる寸前………。



『貴女に、これを………。アズリ』

そう言って、儚い力で首飾りを握らせた。


『え………。

これはおばあちゃんの想い出の品でしょう?』

そう呟き返そうとする孫娘を、彼女はやんわりと止めた。


『いいのよ。

貴女だったら………、貴女ならば、

きっと自分の運命を切り開くことができるから』

彼女は微笑み、そして………。


『おばあちゃん………?』

緩くゆらしても、呼び掛けても、瞼が開く気配はなくて。





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