第1章 首飾り
「――アズリ………!」
カフェにて紅茶とタルトを挟んでいたとき、ふいに名を呼ばれ。
「ぁ………ごめんなさい。なに?」
「何、じゃないよ。貴方また上の空だったじゃない………。」
「ご、ごめんなさい」
苦笑しつつ、祖母から譲られた首飾りにそっと触れる。
(おばあちゃん………。
あなたはどうして、あんな事を………?)
病床に臥す祖母は、躯となる寸前………。
『貴女に、これを………。アズリ』
そう言って、儚い力で首飾りを握らせた。
『え………。
これはおばあちゃんの想い出の品でしょう?』
そう呟き返そうとする孫娘を、彼女はやんわりと止めた。
『いいのよ。
貴女だったら………、貴女ならば、
きっと自分の運命を切り開くことができるから』
彼女は微笑み、そして………。
『おばあちゃん………?』
緩くゆらしても、呼び掛けても、瞼が開く気配はなくて。