第1章 出逢いは深紅色
痛い…
苦しい…
どうして、どうしてこんなことに…。
私はずっと暗闇の中を走っていた、モヤモヤしたところをずっと走ってる。
本当に走っているのか、進んでいるのか分からない。
お母様とお父様はどこ?
あの日、この部屋から出てはいけないと言われた気がする。
確かあれは…、18歳になってすぐの出来事だった。
「こーら、隠れても無駄です。立派なレディなんだからしっかりしなさいな。」
「お母様…、だって刺繍は目が疲れて苦手なんですもの。」
お母様はふふっと笑って「まだ若いのに。」と私の頭を撫でる。
私はお母様が大好きだ。
お母様の言う事は絶対、厳しいけれど明るくて優しくてあったかくてとっても大好き。
「さぁ、お勉強の時間よ。先生を待たせては失礼でしょう?」
「え〜、もう?」
「はいはい、姿勢もなってませんね。これでは今日のおやつと紅茶は無しにしちゃおうかしら?」
「お、お母様!んもぅ…!分かったわ、ちゃんとやるからっ!お願い〜!」
毎日礼儀作法、刺繍、音楽等のお勉強ばかり
これも全て、花嫁修業のため。
ある程度年齢が経つと社交界の場にもお婿さんを探しにお邪魔するようになる。
周りのみんなが婚約者を決めてる中、私は全くお相手を見つけることが出来なかった。
この黒い髪色が珍しいせいか興味を示して話しかけてくる人がいても、婚約に至ることは無かった。
お父様と同じ黒髪も大好きな私は、珍しいというだけで話し掛けてくるみんなの目がすごく嫌い。
そう言う人に限ってこの髪色を馬鹿にする。
最初はやる気に満ち溢れていた私も、今では面倒な気持ちが上回って壁の花と化していた。
それでもお母様の言いつけ通り、予め決められていた舞踏会で踊るお相手の名前を覚えなくちゃいけない。
めんどくさい、と思いながら自分の部屋で舞踏会の準備をしていた私に突然怖い顔したお母様とお父様が〝絶対にこの部屋から出てはいけない〟と言い出す。
あまりにも緊迫した空気に、私はその理由を聞くことが出来なかった。
だけどその日は夜から大雨で雷が鳴り響いていて、私はずっとベッドにうずくまっていた。
「…一人は寂しい…。」
シーツをギュッと握る。
その時、突然ガシャンッと窓ガラスが割れ外から喚く声が聞こえて私は怖くなり我慢できずにドアを開けてしまったんだった。
そこからは、もう上手く思い出せない…。