第2章 中編
野外での視察を境に、ユーリは暇を見つけては図書館に籠るようになった。
元々帝都にいる時は別行動が多かったので、ユーリが帝都の図書館に籠っていてもアーデンが何か言ってくることはなかった。
今ユーリが読んでいるのは、この国の歴史書。
ここ数日でユーリはこの国の、いやイオスの歴史を辿っていった。
なぜこんなことをしているのか。
それは、あの日を境にアーデンのことを知りたいと思ったからだ。
そして聞いても素直に教えてくれないのは分かっていたので、自分で調べることにしたのだ。
しかし調べると言っても、彼が言う2000年の歴史を辿るだけでも膨大な量の本を読まなければならない。
更に言うならば、2000年以上前の、それこそ神話を理解する必要があるかもしれない。
不死身の身体で、痛みを感じ味覚はなく、眠れない。
最早ここまでくると、何か相当な罰当たりなことをして、神の逆鱗にでも触れたのかと思うのだ。
痛みに関しても、何気に嘘をついていた。信用されてないのか、ただの気まぐれなのか。
因みに眠れないのは、最近アーデンを観察していたら気づいた。
聞いてみれば案外あっさり教えてくれたので、彼に対する現在の情報は素直に教えてくれるのだろう。
だけど、私が知りたいのは過去の話だ。
ユーリは分厚い歴史書を閉じると、そっとため息を吐いた。
読書が好きなわけではなかったので、慣れない作業に自然と疲れが溜まる。
ふとなぜあんな男の為にここまでしてるんだと我に返る時もあるが、何となく止めることなく続けている。
別にアーデンに絆されたわけではない。
だた少しだけ、彼のことが気になったのだ。
私が彼の過去を知ったところで何も変わらないかもしれない。
だけど何となく、知らなければいけない、そう思ったのだ。
根拠は何もない、これはただの勘だった。