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短編集【ONE PIECE】

第1章 春島にて


深夜になり、依頼主に組まされた男と二人で、静まり返った劇場船へ侵入する。
この男は海賊ではなかったが、裏稼業を転々としているらしい。

「xxxxを誘拐なんかしたら世間が大騒ぎだぜ、依頼主はどうするつもりだ?」
「さぁな。目的までは聞いてねェ」

人攫いの依頼は多いが、目的は多岐に渡る。
高値で取引したい人身売買のブローカー、美男美女を寵愛したい権力者、珍獣種マニア、人体実験を目論む科学者など色々だ。
とりわけ有名人の誘拐は難易度が高く、依頼主は事態を揉み消せる権力者であることが多い。
今回の依頼主もそういった類の者だろう。

「いいよなぁ、誰もが手にしたいと願う美女を毎晩好きにできるなんてよ~」
権力者の中には、この下衆な男のような願望を抱く者もいるだろう。

それにしては警備が手薄すぎないか、とすんなり侵入できたことを疑問に思いながら、劇場船の外壁からがらんとしたレストランへ侵入し、最上階の部屋を目指す。
(能力を使えば簡単だったが、必要に迫られない以上見ず知らずの男に手の内は明かしたりはしない)

「なぁ、献上する前に味見しねェか?」
「…遠慮する」
「何だよつれねぇなぁ、まぁアンタ女に困ってなさそうだしな」
「傷一つでもつけたらただじゃすまねェぞ」
「大丈夫だって、わかりゃしないさ」

こんな醜い男に嬲られるくらいなら、女も舌を噛み切って死ぬだろう。
もしそうなったらこいつを片付けるしかないと思った。


最上階には1室しかなかった。
その部屋の扉は、外側から派手に破壊されていた。

「しまった!先客か…女は!?」

男は慌てて中へと駆け込んでいく。
なるほど、俺たちと似たような先客がいたなら警備の薄さも納得がいく。
慣れた連中が騒がれぬように始末したのだろう。
きっと女ももういない。
依頼主には悪いが、俺としては退屈な仕事がさっさと済んでくれてありがたかった。

刹那、部屋の奥から物音と言葉にならないうめき声のようなものが聞こえた。
残党がいたのだと思い急いで駆けつけると、俺はその光景に目を見開いた。


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