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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第7章 【占い学と死神犬】


 トレローニー先生はカップを持ったまま、まるでこの世の終わりのような顔をしてドラマティックに床に座り込んだ。もう生徒達はみんな野次馬根性丸出しでハリーとトレローニー先生の近くに寄って来た。

「まだ若い身空で、本当に可哀相な事……でも予言は避けられませんわ。貴方には墓場に憑りつく巨大な亡霊犬のグリムが憑りついています。そう、これは紛れもなく『死の予告』ですわ!」

 先生がそう宣告すると、生徒達は恐れおののき、ハリーをまるで棺桶に片足突っ込んだ重病患者を見る様な目つきで見ていた。そう、たった1人を除いては。

「そうかしら?これ、どうみてもグリムには見えないと思うけど」

 ハーマイオニーがそうつっけんどんに言い放つと、トレローニー先生は何事も無かったかのようにスッと立ち上がって、片手で眼鏡をかけ直してハーマイオニーを見つめた。

「失礼ですけど、貴女には殆んどオーラを感じませんの。未知なるものを見つめる神秘なる感受性と言うものが皆無と言っても良いくらいですわ」
「ああ、そうですか」

 ハーマイオニーは全く気にも留めていない様子だった。こんなハーマイオニーは初めて見たが、それよりも、生徒達はみんなハリーのカップに気を取られていて、本当にグリムが移っているのか覗こうと身を乗り出していた。

「……確かに、こうやって見ると大きな犬みたいに見えるな」
「でも、反対から見るとまるでロバみたいだ」
「皆いい加減にしてくれないか!?僕が死ぬのがそんなに楽しいって言うのか!?」

 周囲の目に晒されて、遂にハリーがキレた。それでなくとも『生き残った男の子』として特別視される事が多いのだ。これ以上注目を集めたくないハリーからすれば、グリムに憑りつかれているよりも皆からまた特別視されることの方が嫌だった。
 ハリーが怒鳴ると、トレローニー先生はカップをテーブルの上に置いた。

「皆さん、今日の授業はここまでにしましょう。それではまた、お会いする時まで……皆さんに幸運を」

 トレローニー先生は独特のか細い声でそう言うと、また暗い教室の奥に引っ込んでいってしまった。これからこんな授業が毎回行われるのかと思うと、ハリーやハーマイオニーだけでなく、クリスもこの授業を選択したことを後悔せざるをえなかった。
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