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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第7章 【占い学と死神犬】


「ロン、肩車でもしてみる?」

 ハリーがそう提案した時、まるで声に反応したかの様にパッと撥ね扉が開き、するすると銀色の梯子が下りてきた。何とも怪しい。ここは誰が一番初めに教室に入るのかだ。

「僕が行こうか?」
「いや、ここは僕が」
「いいや、私が行こう」
「「どうぞ、どうぞ」」
「――って、本当に私に上らせるつもりか!」

 ジョークの分からん奴らだ、と毒吐きながらも、結局クリスが最初に教室に入ることになった。
 教室に入った瞬間、むわっとする熱気と匂いにクリスは思わずローブで口と鼻を覆った。ここは他のどんな教室よりも異質な空気を放っており、折角の塔の天辺だというのに窓という窓は全てカーテンで塞がれていた。おまけに部屋の中は薄暗く、普通のテーブルではなく小さな丸いテーブルが20脚近くバラバラに並び、椅子もふかふかの丸い椅子や肘掛け椅子ばかりだった。しかも壁にはずらりと棚が設置され、古臭い羽根や不気味な蝋燭、使い古したトランプに、数えきれないほどの水晶玉と何組もの紅茶のカップが並んでいた。

「ここ……本当に教室?」
「その声、ハリーか?他の皆は?」
「多分そろそろ上がって来るよ」

 ハリーの言葉通り、生徒が1人、また1人と順番に梯子を上って来た。クリスとハリーは、ロンとハーマイオニーが上がって来たのを確認すると、4人でかたまって近場の丸椅子に腰かけた。

「ようこそ、あたくしの『占い学』に」

 突如どこからともなく、か細い声が聞こえてきた。そして暗がりの中から、ゆっくりとトレローニー先生が姿を現した。細いは声だけでなく身体もひょろひょろで、大きな虫眼鏡の様な丸眼鏡をかけていた。

「皆様にお会いできて、あたくし大変嬉しゅうございます。おそらく皆様はあたくしの姿を見たことが無い方ばかりでしょうから。残念ながら学校の俗世の中に長居しますと、あたくしの『心眼』が曇ってしまいますの」

 『心眼』ってなんだ?とその場にいた全員が思ったが、誰も口には出せなかった。この不気味ともいえる雰囲気に飲み込まれ、生徒は誰ひとり口を開こうと思わなかった。
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