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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第6章 【命短し恋せよ乙女】


「ついに見つけた――私の『ハリー・ポッター』」
「はあ??」

 クリスの吐息交じりの発言に、ロンが素っ頓狂な声をあげた。しかしもうクリスの目にはルーピン先生しか映っておらず、ロンがクリスの目の前で手をヒラヒラと動かしても、クリスはただボーっとルーピン先生の通って行った後姿を、とろんとした目つきで見つめているだけだった。

「大丈夫、クリス?本物のハリーはちゃんとここにいるでしょう?」
「違う!そうじゃない、私が言っているのは私の理想の『ハリー・ポッター』の事だ!!」
「何かその言い方、まるで僕が偽物みたいじゃないか……」

 クリスの言葉に、ハリーはちょっと落ち込んでいた。とにかくクリスを力ずくで席に座らせると、ハリーとロンとハーマイオニーはそろってため息をついた。こんなクリスを見るのは、マグル製品を舐めるように見つめている時だけだ。いや、今回に限ってはそれ以上と言っても良かった。こうなってしまうと、もう誰もクリスに手を止められない。
 しばらくボーっとルーピン先生の影を見つめていたクリスだったが、思い出したようにハッと自分の手にあるチョコレートに視線を向けた。

「そうだ!このチョコレート、ルーピン先生がくれた物だったな!溶ける前に食べなければ勿体ない!!」

 そう言ってチョコレートを一口かじった。すると先ほどまでの寒気や疲労感が全て吹き飛び、天にも舞い上がりそうなほど幸せな気分に包まれた。一見どこにでも売っている安物の板チョコだったが、味はマルフォイ家でも食べた事が無いくらい甘い口どけと、まろやかな舌触りだとクリスは思った。

「みっ、皆食べないのか?もの凄く美味しいぞ!食べないなら私がもらう!!」

 本当に奪い取られそうな勢いで目をギラつかせていたクリスを見て、皆急いで一口チョコレートをかじった。すると他の3人も、クリスと同じようにとまではいかないが、先ほどまでの不快感が払拭され、目に見て元気が出てきたようだった。

「本当だ、美味しい――っていうか、体が温かくなる様な……」
「不思議ね。ただの板チョコなのに」
「あの先生、この為にチョコレートをくれたのかな?」
「そうだ!そうに決まってる!……あぁ、見た目や言葉だけでなく、知識まで豊富だなんて……」
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