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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第32章 【幕引き】


 ブラックは一呼吸おくと、また瞳に光が灯り、ピーターを睨みつけた。ピーターは後ずさりしながら、どこかに逃げ道は無いかと必死になってキョロキョロと辺りを見回した。

「ファッジのくれた新聞に、ピーターが載っているのを見つけた。もし闇の陣営が再び力を取り戻したら、ピーターはハリーの首をみやげに戻ると思った。そうすれば疑いも晴れ、難なく元の陣営に戻れる。そう思ったら私の心に火が付いた。ディメンターでさえもこの感情を奪う事は出来なかった……これは幸福ではない、強いて言うなら……妄執……そう、執念だ。私はある晩、食べ物を運びに独房の戸を開けた時、犬になって奴らの脇をすり抜け、脱獄した。そして北へと旅に出た。その途中で、クリス、君に出会った」
「それじゃあ……もしかして夏休みに私を襲って来た犬は……」
「そう、私だ。君の家は純潔一族としてとても名高い……私はハリーの敵を1人でも少なくしておこうと思い、君を襲った。だが君は私が思っている人間とは大違いだった。カラスに襲われ傷ついた私を手当てしてくれたばかりか、食べ物を与えてくれ、おまけに笑顔でマグルの電化製品のカタログを熱心に見せて、私を12年ぶりに笑わせてくれた。あんなに楽しい時間は本当に久しぶりだった。ありがとう」
「いや――そんな、礼を言われるほどでは……」

 ブラックが目を細めて笑った。素直に笑った顔を見るのはこれが初めてだった。クリスはちょっと照れくさくなった。あれほど頭が良いからだたの犬ではないと思っていたが、まさか人間だったとは。クリスは約1年前の出来事を思い出して、助けておいて正解だと思った。

「そしてホグワーツに着くと、私はこの屋敷を住処にした。ここなら禁じられた森と違い、危険もないし誰も近づこうとはしないと思ったからだ。たった1度、クディッチの試合を見に行った事はあったが――ハリー、君はお父さんに負けないほど飛ぶのが上手い」

 ブラックはハリーをジッと見つめた。ハリーもまた、ブラックを見据えている。
 2人とも真っ直ぐ、純粋な瞳でお互いを見つめている。今この瞬間、2人の心と心の間に、言葉に出来ない何かが通っているとクリスは感じ取った。
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