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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第32章 【幕引き】


「そう、それも疑問の一つなんだピーター。もしシリウスが犯人なら、君は何故12年間もネズミとして隠れて暮らしていたんだい?シリウスがアズカバンに幽閉されたと知っていたら、脱獄するなんて誰が思う?未だかつて脱獄したものはいないというアズカバンを」
「それは、きっと……そう!こいつは私達が想像もつかない様な闇の魔術を『例のあの人』から教わっていたんだ!」
「ヴォルデモートが私に魔法を教えたって!?」

 それを聞いて、ブラックが高笑いをした。思わず総毛立つような不気味な笑い声だった。ピーターは「ひっ!」と言って亀のように体を縮めた。『例のあの人』の本名を聞いてロン、クリス、ハーマイオニーの3人はビクッと体を動かした。しかしシリウスはそんな事お構いなしだった。まるで『例のあの人』をちっとも恐れていない様だ。

「どうした?久しぶりにご主人様の名前を聞いて怖気づいたか?それもそうだろうな、ピーター。お前の昔馴染みはお前の事を快く思っていない」
「それは……いったい、どういう意味かな?」
「お前は12年間もの間、私から逃げていたのではない――ヴォルデモートの手下から逃げていたんだ!アズカバンでお前の噂を色々耳にしたぞピーター。私は囚人たちが寝言で色々叫んでいるのを耳にした。ヴォルデモートはお前の情報でジェームズ達の家に行ったそうだな。だが奴は破滅した――しかしヴォルデモートの手下共は全員捕まった訳ではなかった。そうだろうピーター?何人かは改心したふりをして平然と暮らしている。そいつらがもし、お前が生きていると知ったら、どうするか知らないわけじゃないだろう?」
「い、いいいったい何が言いたいのやら……」

 ピーターの声は窮地に陥れば陥るほど、キーキーとネズミのように甲高くなった。今やピーターは孤立無援の状態で、額にびっしり汗をかき、今にも泣き出さんばかりだった。ピーターは薄汚れた手でルーピン先生の足元に跪いて訴えた。

「ルーピン、優しい君なら分かってくれるね?こんな馬鹿げた話――」
「ピーター、私は無実の人間が12年間もネズミに身をやつしている方が理解できないよ」

 相変わらず、先生は笑っていた。こんな時に――いや、こんな時だからこそ笑っていられる先生が怖かった。それを感じたのか、ピーターが突然喚きだした。
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