第30章 【在りし日の思い出】
「スネイプ先生は、実は私達と同期なんだ。私が『闇の魔術に対する防衛術』の職に就く事に先生は頑なに拒んだ。ダンブルドア先生に、私は信用ならないと言い続けていたんだ。勿論、スネイプ先生には先生なりの事情があった。それはね、このシリウスが仕掛けた悪戯で、危うく先生が死にかけたんだ。そしてその悪戯に、私も関わっていたんだよ」
「当然の報いだった」
ブラックはまるで仇を嘲るかのように言った。口角を持ち上げ、あくどい顔で皮肉そうに笑った。
「こそこそと私達の周りを嗅ぎまわり、私達を退学に追い込もうとしていた」
「スネイプ先生は、私が月に1度学校を離れるのに非常に興味を持ったんだ――しかし、その、私達はあまり仲が良くなくてね……セブルスは特にジェームズを嫌っていた。ジェームズの持って生まれた才能をね。箒の腕や、頭の良さ、それにカリスマ的な魅力もね。嫉妬……とでもいうのかな」
確かに、言っては何だがスネイプにはどれも無い才能だ。ハリーのお父さんがどういう人だったか詳しくは知らないが、ハリーとそっくりだというからには、さぞかしその父親をも憎んでいた事だろう。ルーピン先生はシリウスを無視して、4人に向かって話した。
「先生はある満月の夜、私がマダム・ポンフリーに引率されて校庭を歩いている所を見てしまったんだ。そしてシリウスが、あー、その……からかってやろうと思って『暴れ柳』の秘密を教えてしまったんだ。『長い棒で幹のコブを突けば動きが止まる』って。もしスネイプ先生が狼になった私と会っていたら、間違いなく命を落としていただろう。しかし、ジェームズがシリウスの悪戯を聞くなり、自分の危険も顧みずスネイプ先生を引き戻したんだ。その時……先生は狼男になりかけた私を見てしまった。校長先生が他言無用だと言ったが、その時からスネイプ先生は私の正体を知ってしまった」
「そうか、だからスネイプは彼方が嫌いなんだ、彼方もその悪戯に加わっていると思ったから」
「その通り」
突然、ルーピン先生の背後から聞き覚えのある声がしたと思うと――『透明マント』を脱ぎ捨て、スネイプが姿を現した。