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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第23章 【胸の棘】


 1年生の時、クリスがハリーの事を『ハリー・ポッター』として、その名前だけで勝手に人格のない『英雄』として扱い、ハリーの気持ちを全然考えなかった事があった。その時、酷くハリーを傷つけて、結果口もきいてくれない状態にまでなってしまったのだ。

「でも、あの時の事がどうかしたのか?」
「うん、あの時……君に対して凄く怒っているんだけど、君を許したい気持ちもあって、僕すごく悩んでいてね。その時フレッドとジョージに言われたんだ。そうやって悩んでいるときは、『まず自分のやるべきことを決めるんだ』ってね」
「自分の、やるべきこと?」
「そう、それから『やるべき事を決めたら覚悟を決め、目標に向かってただひたすら突っ走る。そうすればどんな事だって上手くいくものさ』ってね。ねえクリス、君のやるべき事って何だと思う?」
「……ハーマイオニーと仲直りする事……かな?」
「じゃあ答えは簡単だよ、これからハーマイオニーの所へ行って、仲直りしてくれば良い」
「そんな上手くいかないから悩んでいるんじゃないか」

 話しはそんな簡単ではない。そもそもあの時はお互い仲直りしたい気持ちがあったからこそ上手くいったが、今のハーマイオニーを見ていると、とてもクリス達と仲直りしたいと思っているようには見えない。だが、ハリーの意見は違った。

「大丈夫、難しく考えるからいけないんだよ。もっといつも通りに接してみてごらん。それが出来る事が君の1番良い所なんだから」
「……いつも通りに、か」

 そう考えると、クリスの心に一筋の光が見えてきた気がした。意地っ張り同士、どうすれば良いか。1年生の時、すこぶる仲の悪かったハーマイオニーと、どうして仲良くなることが出来たのか。そしてどうやってドラコと仲直りできたのかも。クリスはスープでポテトを胃の中に流し込むと、席を立った。グリフィンドールのテーブルに、ハーマイオニーの姿はない。

「ハリー、ロン、悪いが私は一足先に談話室へ戻っている。もし談話室に居なかったら、図書館に行ったと思ってくれ」
「分かった、行っておいで」

 「上手くいくよう願ってるよ」そう言うハリーに、クリスは微笑むと大広間を後にした。ハリーは隣りでスモーク・チキンを頬張っているロンに声をかけた。
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