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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第22章 【愚か者】


 翌日の土曜日、クリスは久しぶりに昼間に目を覚ました。ここのところ、宿題を片付けるのに夢中でどっと疲れがでたのだ。だがせっかくの休日だと言うのに、談話室はがらんとしており、生徒は誰もいなかった。そこで、クリスはやっと今日がグリフィンドール対レイブンクロー戦だと思い出した。

「あー、応援に行かなきゃなあ」

 1人、大広間で紅茶を飲みながら、クリスは独りごちた。だが、よく見るとがらんとした大広間に、去年も会ったあの不思議な少女がいた。名前は――そう確かルーナ、ルーナ・ラブグッドだ。
 ルーナは前と変わらずお守りやらアクセサリーやらをじゃらじゃら付けて、雑誌を反対にして読んでいた。クリスはルーナの座っている真正面に座った。

「やあ、久しぶりだな。私の事は覚えているかな?」
「覚えてるも何も、初めから知ってる。あんた達有名だもん」
「ルーナはクディッチ観戦にはいかないのか?今日はレイブンクロー戦でもあるんだろう?君はレイブンクロー生じゃないのか?」

 ルーナは雑誌から目を離し、ボンヤリとした目でクリスを見た。

「応援したい選手がいない。あたしレイブンクローでもはじかれ者だもん」
「どういう事だ?」
「あたしが変人だって。皆あたしのこと、『ルーニー・ラブグッド』って呼ぶよ」
「それは酷いな。そう言う相手にはそれ相応の仕返しをしてやれ」
「そんな事したら、ますます酷くなる。放っておくのが1番良いってパパが言ってた」

 確かに、ルーナの見た目は変かもしれない。いや、見た目だけでなく行動も変だ。だいたい雑誌を逆さまに読むこと自体おかしいが、話してみれば普通の女の子だって誰だってわかるはずだ。それを『ルーニー』だなんて。
 その時、クディッチ競技場の方から大歓声が聞こえてきた。しまった、もう試合が終わってしまったみたいだ。

「それじゃあ私はもう行くよ、また会おう、ルーナ」
「うん、またね」

 クリスは競技場へ急いだ。もちろん勝っていると思うが、ファイアボルトに乗って初めての試合だ。せめて勝利の瞬間くらいは見届けたい。
 それに――こう言っては何だが、きっとルーピン先生も観戦に来ているのかと思うと、ひと目先生に会いたいという願いがこみ上げた。
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