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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第15章 【悪戯仕掛人】


 これは、もしかして――杖でつつけという事か?
 クリスはローブから杖を取り出し、試しに像を杖でつついてみた。しかし何も起こらなかった。今度はハリーが地図を杖でつついてみると、ハリーとクリスの名前が書かれた点から、泡の様な吹き出しが出てきて『ディセンディウム』と書かれていた。

 2人は興奮しながら、目を合わせた。そしてハリーが恐る恐る杖でこぶをつつきながら『ディセンディウム』と唱えた。するとこぶが人1人入れるくらいの隙間が出来たではないか。誰か先生が来ない内に、2人はそのこぶの割れ目に体を滑り込ませた。

 たちまち、クリスの体は石の滑り台を滑る様に滑走していった。いっったいどれ位滑り落ちていっただろう。まるで『秘密の部屋』のパイプを滑り落ちていった時の事を思い出した。しかしあの時とは違い、着いた先には危険ではなく、甘いお菓子がまっている。

 やがて、クリスの体は湿った冷たい地面に着地した。杖明かりをつけると、そこは洞穴のような所になっている。ハリーが忍びの地図を消すのを待ってから、2人は歩き出した。1本道なのはあり難かったが、いかんせん通路が長すぎた。道はデコボコで天井が低く、身体をくの字に曲げて歩かなければならないのは苦痛だった。

「クリス、大丈夫?」
「ああ、なんとか……でも2度と通りたくはないな」
「頑張って、ハニーデュークスに行けば美味しいお菓子が沢山待っているから」

 時々2人で励ましあいながら、長いトンネルを歩いた。暗い洞窟の中は永遠に続いているように思えた。ホグワーツを出発してから小一時間位歩いただろうか、今度は石で出来た階段に出た。それを何百段上っただろうか。突然ハリーが「アイタッ!」と言って立ち止まった。

「どうした、ハリー?」
「イタタ……何か頭にぶつかった」

 よく見ると、それは撥ね戸だった。ハリーは慎重に撥ね戸から顔をのぞかせると、耳を澄まして辺りを見回した。
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