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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第14章 【Shit】


 しかし、好きな人にプレゼントをする為、努力するという事は、とても心の温まる行為だった。これが恋というものなのだろうか。そう言えば、入学前、まだ『ハリー・ポッター』に憧れていた頃、その名前を呼ぶだけで気持ちが上向きになったのをクリスは思い出した。

 クリスはひと目ひと目編みながら、ルーピン先生の顔を思い浮かべた。そしてこれを渡した時、先生がどんな顔をするのかを思うと、嬉しさ半分不安もあった。しかし、もしあの心が温まるような優しい笑顔を自分にだけ向けてくれるのなら、きっとどんな努力も惜しまないだろうという確信があった。

「ハーマイオニー……ありがとう」
「良いのよ、私も――あなたの気持ちが分かるもの」
「え?まだロックハートの事が好きなのか?」

 あの胡散臭いペテン師に、まだ思いを寄せているのかと思うと、クリスは驚きを隠せなかった。1年前、他人の業績を自分のモノとして本を出版していたロックハートが、ロンの壊れた杖を使って記憶喪失になった。因果応報と言うやつだが、そんな男に、ハーマイオニーはまだ本当に気があるのだろうか。

「ハーマイオニー、親友として言わせてもらう。ロックハートだけは止めておいた方が良い。あれは碌なもんじゃない」
「違うわよ、ロックハート先生じゃないわ。もっとこう――別の人よ」
「そうか、それなら良いが……聞いても良いか?いったい誰だ?」
「そのうち教えてあげるわよ」
「絶対だな、約束だぞ」
「ええ、約束よ。その時が来たら、ね。だから貴女も小さなことでくよくよしないで、ドンと構えていなさい。例えルーピン先生がどんなにハリーを贔屓しようと、恋人にはなれないんだから」
「そうか……それもそうだよな。私としたことが何を心配していたんだろう」 

 ロンやハーマイオニーの言う通り、どんなにハリーが頑張っても、ルーピン先生と結婚はおろか付き合う事すら出来ない。男に嫉妬するなんて全く意味のない事だ。それを思うと、なんてちっぽけな事で落ち込んでいたんだろうと、クリスは認識を改めた。
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