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君の涙【ヒロアカ】

第2章 ラストJC



 海岸沿いは特段冷たい風が吹いている。個性を発揮する時、翼が服を貫通するので、渋々コートを脱ぐ。それでも中に着ているシャツは犠牲になってしまうが。
 バサッと音を立てて翼を出すと、周りに白い羽がふわりと舞う。背中の部分がビリビリと破れて、背中と翼に冷気が当たり、ぶるぶると身震いをする。

 「す、すごい…の個性って……」
 『…さ、さぶい』
 「おお、そうだな!もういいぞ、少女」

 オールマイトからコートを受け取り、翼をしまってコートを羽織る。さっきまで自分が着ていたので、まだほんのりと温もりが残っている。

 「君の個性は天使、だね」
 「ててててて、てて天使っ!?」
 『そ、そうなんですか?私はてっきり鳥かなんかだと思ってました』

 彼曰く、ほとんどの鳥の個性は翼の大きさを調整できないらしい。私の翼は意識すれば大きさを変えることができる。普段は最小限の大きさで生活しているので、普段は背中を見ても何も見えないようになっている。

 「希少な個性だ。あの敵も君の個性を狙って来たんだろう。少女の個性をどこかで知ったんだろうね」
 「でもなぜが狙われるんですか?そりゃ確かにすごい個性だけど」
 「天使の個性を持つ者の涙には治癒能力もあるんだ。治癒能力を欲するものは多いからね。治癒能力だけでも珍しいのに、それに合わせてこの力があれば、敵たちが少女を仲間に取り込もうとするのも理解出来る」
 『それってつまり……』
 「……少女の言いたいことは痛いほどわかる。だが、時間が経過したものには意味が無い」

 もしあの時気を失わずに涙を流していたら、お父さんもお母さんも無事だったってこと?自分がこんなにも非力じゃなければ、お父さんも死ななかったし、お母さんもひどい怪我をしなくて済んだんだ。そう思えば思うほど、だんだんと視界が霞んで見えた。今更涙なんか出たってお父さんとお母さんの傷を癒すことは出来ないのに。

 『うっ……うう…』
 「………」
 「……きっとこれからも少女を狙って多くの敵が襲ってくるだろう……私のところへ来なさい。私が君を守ろう」

 声を詰まらせて泣く私の頭を、オールマイトの細い手が優しく撫でる。どれくらいそうしていたのかは覚えていない。

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