• テキストサイズ

許色【ONE PIECE】

第12章 許色


廻廊のゆるやかな階段にもたれかかり読書をしていると、足音が近づいてきた。
穏やかな風が心地よさを運ぶ、午前が終わろうとしている頃だ。
コツリという音を立て足を止めたのは、スーツ姿の美しい海兵、黒檻のヒナだった。

「ヒナ嬢…出撃命令か?」
「いいえ。少し、あなたに話が」

ちらりと目をやった先の彼女は、いつものキリっとした表情に少しの憂いが見られた。

「単刀直入に聞くわ。昨晩、あなたはどこへいたかしら」

質問の意図を察した私は、ぱたりと本を閉じ彼女の視線に合わせる。

「それを知ってどうする」
「スモーカーくんの部屋にいたわね?」

それを確信しているような論調で、ヒナが畳み掛ける。

「あいつといたら何だと言うんだ?」
「!認めるの…?」
「私は肯定も否定もしていない」

昨晩のことがヒナに知れても別に構わない。
ただ、私の行動を一々指摘されていては、今後都合が悪い。

「例えば、私がミホークと付き合っていると言ったら?」
「えっ…?」
「ふふ、今少し信じただろ?でも、嘘かもしれない。確証を伴わない私の言葉など、お前の信用を得るに値するのか?」
「けれど…スモーカーくんのあの様子は…」

ヒナは今朝、スモーカーの居室へ行って察したのだろう。
問い質すもはぐらかされたから、私の元へ来たのだ。

「もしそうだったとして、お前は何を心配している?スモーカーのことが気になるのか?」

食堂や鍛錬場で話している海兵たちの雑談から、内部の雑多な情報を得ていたので、ヒナとスモーカーが同期で仲が良いことは知っていた。

「そういうのじゃないわ…彼は、手のかかる同期なの」
「あぁ、野犬を手なずけるのは大変そうだな」
「あなたは、簡単に手なずけてしまったけどね」

ヒナは困った顔をして、少し笑った。

「スモーカーくんは優しいの。そして、本気であなたのことを…」

先日、脈がないから諦めろと進言していた姿を思い出す。
高望みをする同期に呆れて、冗談混じりで諭したように見せていたが、ヒナの本心だったのだろう。

「だから、彼の気持ちを弄ばないで」

/ 37ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp