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鈍色【ONE PIECE】

第8章 煙雨


嘴から放たれた新聞が、ぽとりと身体の横に落ちた。
澄んだ青空に揺れる鳥の影が、弧を描き遠ざかっていく。

いつものように早朝トレーニングを終え、私は甲板に一人、仰向けに寝転んでいた。
半身を起こし新聞を拾うと、挟まれていた一通の手紙がひらりと舞う。

封には、海軍のマークが刻まれていた。

*

賑やかな喧騒を抜け、私は一人砂利道の上を歩いている。


今回上陸した島はそこそこ大きくて、ログのために1日滞在することとなった。
午前のうちに皆で一通りの買い物をしたり、情報収集をしたりと、仕事は済ませていた。
丸一日羽を伸ばせるということで、クルーたちはいつも以上のやる気を出したのだろう。
終わったー!酒だー!遊ぶぞー!とテンション高く全員で酒場に入っていく。

入口からちらりと覗いた店内はかなり広く、客は昼間から宴会騒ぎをしている。
いつの間にかローの周りには女が群がっているし、クルーたちも宴会に交じっていた。
海賊というものは本当に宴が好きらしい。

たまには水入らずで、と何となく気を使いたくて、私は皆を後にし店を出たのだった。
昨日のことでローとも会話をしていなかったし、ちょうどよかった。

私は自分の船のことを思い出していた。

当たり前のように傍にいて、私に居場所をくれた仲間。
こんなにも募る思いでいっぱいになる。
全員無事で過ごしているだろうか、皆も同じ気持ちでいるのだろうか。
孤独と生きていた私が、こんなことを考えるようになるなんて。
もしかすると、ホームシックというやつかもしれないと思った。


歩き続けると、辺りはいつの間にかしんと静かになっていた。
通りに人影はほとんと見えなかったが、飲食店らしき建物がぽつぽつと建っている。
そうだ、何か食べるものを、とぼんやりしながら引戸を開けたところ、入口の段差で躓いてしまった。
勢いで顔を上げると、深く被っていたフードがぱさりと落ちる。
店内に客は一人しかいなかった。

音に反応した客がこちらに顔を向け、目があった。
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