第2章 出会い
"逃げられない"
そう本能で感じたコレーは緊張で乾いた唇を舌で湿らせてゆっくりと口を開いた。
「…早く会いたかったから…そうだったら良いな…と……申し訳ございませんっ、自惚れすぎですよね…」
「…コレーちゃん」
「はいっ…」
「ハグしていい?」
「…はい」
ハグという行為は互いに好意や信頼関係があるからこそ成り立つものだとお母様から教わりました。好きでもない異性とのハグは絶対にするなとも…………『好き』?コレーの尊敬や景仰だと思っていた感情に答えがでた。
恋だ。わたくしはハデス様に恋してたんだ。
誰もやりたがらない仕事をこなしていれば例え神であっても性格が歪んでしまうのは有り得ない話ではないし、むしろ可愛げがあって良いと思ってしまうのはわたくしが変わっているからでしょうか…?冥界に来てから充分過ぎる程気遣われていますし………わたくしに一目惚れだと仰せでした。
…ほんの少し、ほんの少しだけ自惚れてもいいですよね?
ベッドから降りハデスの元に近付くが、どうすればいいのかわからずあたふたしていると「おいで」と優しく腕を引かれ倒れるように彼の身体に吸い込まれた。自身の倍もある体躯からは想像できないほど優しい抱擁。
「苦しくない?」
「…はい」
自分の腕にすっぽり収まるほど小さな身体から柔らかさや温もりを感じる。ほんのり甘く瑞々しい香りが鼻を抜け、渇き切った心を潤していく。鼓動が早く、小動物を抱いているような感覚だった。
「こんなに魅力的な子が他の誰かに盗られる…そう思うといてもたってもいられなくなって…」
「…そう言われてふと思ったのですが、お仕事が忙しいのも相まって性急なアプローチになってしまったのではないですか?」
「あぁ…確かに」
言われてみると最近落ち着いた時間があったかどうかも分からないぐらい忙しかった。今回の件に関しても落ち着いていれば良い出会いになったと確信がある。我ながら余裕のない自分を情けなく思う。
「俺様としたことが、情けないねぇ…」
「…そんなハデス様も、わたくしは好きです」
「……え?」