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【名探偵コナン】幸せを願う

第4章 暗転と覚醒


病院へ到着すると、待ち構えていた医師や看護師に付き添われた南海がストレッチャーで院内へ運ばれていく。力なく横たわるその姿をただ見つめ、飛び交う用語を聞き流していた降谷たちもその後を追いかける。

「っ姉さん!」

処置室と書かれた扉の中へと消えていく南海を祈るように見つめる降谷の耳に届いたのはリノリウムの床を駆ける足音と家族の悲痛な叫びだった。

ハッとした三人の視線が一人の男へと向けられた。
南海と同じ黒髪は短く揃えられている。眉を顰め、唇を噛み締めていても顔立ちが整っていることは分かった。姉の一番の特徴である琥珀色の瞳は弟には受け継がれはしなかったが、その焦げ茶の眼差しは南海とよく似ていた。

「…あ、すみません」

看護師に注意され、我に返った弟、修平が慌てて頭を下げる。処置室前のソファに腰を掛けていた初老の男性は気にするなと首を振った。

「永原くん、こっち。先生の説明あるから」
「はい」
「あの!」

引き留めようと発された音は、看護師が慌ただしく駆ける廊下に思いの外よく響いた。
その声に漸く気づいたのか焦げ茶が三人を捉え、血まみれの姿に目を瞠った。
そんな修平に構うことなく、先程よりも幾分か落とされた声が続けられた。

「ご迷惑でなければ、僕にも聞かせていただけませんか」
「え、あの…」
「降谷です。お姉さんの…友人です」
「僕たちにも聞かせて!絶対邪魔はしないから!」
「…わかりました。ついてきてください。その姿では他の方の不安を煽りかねません」

その言葉に頭を下げた降谷たちが案内されたのは六畳程の白い部屋だった。テーブルと椅子、パソコンとモニターにホワイトボードが置かれたその部屋で各々が無言で待機すること数十分。
扉を開けて入ってきたのは紺色のスクラブに身を包んだ三十代後半に見える男性医師だった。

パソコン前の椅子に座る医師はパソコンに南海のカルテを映し、四人に説明を始めた。




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