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翔る翼と金の空 [進撃の巨人] [エルヴィン]

第2章 オブシディアン


NOsaid
 
調査兵団帰還の鐘が鳴る。
心身共に疲れている彼らを迎えるのは労りの言葉等では無い。

 
寧ろ傷口に塩を刷り込むような罵声に嘲笑…
穏やかなモノでないのは確かだ。

 
「また減ってる…」
「今回は半分だぜ?…金が勿体無いよ。」
 
隠す気も無い耳打ちに運良く生き残った新兵の表情が固くなる。
自分達は人類の為に壁外へ行っているのに、その人類からの対応は冷たい。
 


悔しさを噛み殺し、民衆の間を通る。
この時ばかりは一団を率いるキースでさえも地を力無く睨んでいた。
 
 

負傷した兵士を運び込み、解散が布告されると、皆思い思いの場所へ散っていく。
 
そんな中、エルヴィンは一つの背中に声を掛けた。
 
「ハンジ、少し良いかな?」
「ん?あぁ、構わないよ。」
 
エルヴィンが知るなかで一番生物学に詳しい(変な方向に行っているが)彼女に拾って来たモノを見て貰う。
 

死体回収用の麻袋に入れられたソレは麻酔が効いているのか動かない。


おぉ、と少し興奮の色が見える声を上げると彼女は自身の上半身がすっぽり入る程袋に突っ込んで体を触り始めた。
  
歯茎を見たり、眼を見たりしていたハンジが考え込むように唸る


「んー…犬っぽいけどそれにしちゃ大きいし、尻尾も太い。それに、何より歯の大きさが違うよ。」


エルヴィンはハンジの答えを聞くと、眉を僅かに寄せた。

 
-やはり、徒の犬では無いのか。と-


「…ハンジ、この個体を少し調べてくれないか。」
 
何時に無く真剣に言う彼にハンジは笑って、「少しじゃ無くても良いよ?」と返す。


調査だけとは言わずに血液から脊椎に至るまで研究したい衝動が既にハンジを蝕んでいた。
エルヴィンはそんなハンジの鼻息が荒くなる前に言葉で丸め込む。


「他の兵士に見られたら良くない。ハンジの研究室に移動しよう。」
「そうだね!…何処から調べようかなぁ??やっぱり血液から?それとも脳波を見る?」
「血液は最初に採った方が良いんじゃないか?」


これからの事を喋りながら二人は周りに人が居ないかを確認し、連れ立ってその場を後にした。



麗華が目覚める迄あと数時間。 

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