第3章 アズライト
麗華said
『(…頭痛い)』
寝起きで上手く働かない頭は、痛覚だけを主張してくる
四肢が重いし、全体的にかったるい感じ
ぐるりと見渡しても辺りは暗く、何も見えない
『(夜か…仕事だ)』
゙仕事゙
そこまで思い出して、気づく。
自分は仕事の途中でトリップしたんだった
しかも狼の姿で
瞼ををゆっくりと持ち上げると、白が目に入る。
恐らく私が寝ているベッドのシーツ…だろう。
予想と反して地下牢では無いらしい
そして、夢狭間で感じていた四肢の重みは、ご丁寧に填められた手枷によるモノだった
そのまま呆けて居ると、扉の方から誰かの話し声が聞こえてきた。
耳と鬚をピンと張り、音の振動に集中させる
興奮気味な女の声と、落ち着きのある男の声。
『(…この声は)』
ある意味両極端な二つの声は聞いたことがある。
変人と名高い彼女と一団を背負う彼のモノだろう。
「それでね!さっき調べ終わったんだけど、彼女の披毛は…あ!起きてる…おはようっ!!」
ずいずいと近寄るポニーテール基、ハンジと思われる人物。
手には資料と…血液らしきモノ。
最終的には人語を喋れない事を忘れているのか、なぜあそこに居たんだ、なんて。
人間の様に首を振って否定をする
私自身もなぜ此処に居るのかが解らないから。
それが間違いだった
首を振って否定した事で研究員の顔をしたハンジは更に興奮し、後ろに居た上司のエルヴィンに「見て!!」と、掴み掛かっている。
『(地雷踏んだか…イヤな予感しかしない)』
そっと、気付かれない様に後退する
途中でエルヴィン殿と目が合ったが、気にして居られない。
「…ハンジ、どうやら君に警戒している様だよ」
…助けてもらった。エルヴィン様様だ。
彼のお陰でハンジは自我(?)を取り戻して、資料を読み始める
「この子を調べていて、気になる事が幾つかあって…一つ目は体躯が異常に大きい事。二つ目は此処に有る狼の資料とは全くデータが違う事。三つ目は頭蓋骨の大きさと脳の形が人間に酷似している事」
おぉぅ…いつの間にか分析されてる
指を立てて説明しているハンジも、資料と私を見比べているエルヴィンも真剣そのものだ。
『(ま、そりゃそうか。私の存在自体がこの世界にとって規格外なんだ)』
自分が勝手にそう思っているのに、無性に虚しさが込み上てきた。