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THE WORST NURSERY TALE

第1章 【01】プロローグ


「おせーよ、氷雨」

「ごめん!ターゲットに鉢合わせしそうになって回り道してた」

「謝ったくらいじゃ許さねーし」

「ですよねー。待って待って」


 真っ暗な闇の中。そこかしこにコンテナがある埠頭に、複数の人影がうごめいている。
 氷雨はナイフを取り出したベルフェゴールを宥めると、隊服のポケットから紙を取り出して光度を最小限に抑えたペンライトで紙面を照らす。そこには倉庫の図面が書かれていた。


「これから突入する倉庫がコレ。突入方法は至って簡単。まず囮役が派手に突入して相手の注意を引き、タイミングを見計らって他の人も突入する。あとはその場にいる全員を始末すれば終わりー」

「で?」

「遅れたお詫びに、ベルくんには好きな役割を選ばせてあげよう!」

「氷雨が一番死にそーな役やればいいんじゃね」

「えぇ、逆指名ですか……!」

 ベルフェゴールはにんまりと楽しそうな笑みを浮かべてみせる。彼の思惑通り、氷雨はとてもとても嫌そうな顔をしていた。それでも言い返すような素振りはなく、再び紙面を見つめ直す。

「じゃあ私が南から囮役で突入。そのあと、ベルくんは北から。西と東は君たち2人ずつで頼むわ」

「氷雨様、囮役なら我々が……」

「気にしなくていいよ、王子さまのご希望だし。そんなことしたら刺されかねないし…」

「しし、わかってんじゃん」


 それはそれは楽しそうな少年。その隣で肩を竦める少女。背後で戸惑っている大人たち。なんともシュールな絵面である。
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