第4章 (2)White cat
前のアパートや、宮瀬さんの庭への別れから数日後。
私の引越しが無事に完了した。
場所は従姉妹の住んでいるマンションの上の階の部屋。
ある程度のプライベートは守れつつ、マトリの皆さんが玲ちゃんとセットで守ったり送り迎えがしやすいという理由らしい。
私としても新しい生活は不安なので信頼している玲ちゃんがすぐ側にいるのはありがたい。
……玲ちゃんのお母さんの知人が格安で貸してくれてるアパートとはいえ、前より家賃が高いのが悩ましいけれど…。
ちなみにここへの引越しの際に玲ちゃんの仕事仲間の由井さんと青山さんに会う機会があり、今回の引越しの理由、薬効体質について説明してくれた。
どうやら私の薬効体質は玲ちゃんよりも効かない薬物の種類も少なくかなり不安定なものらしい。
なので監視と言っても万が一の為といった形のようで、基本的には普通に生活して良いみたいだ。
貴重な薬効体質を消さないように刺激物の摂取などを控えることや危険な時間帯に出歩かないことを意識していれば問題ないらしい。
そして私は玲ちゃんのように薬効体質でマトリ入り!という展開はまずないようだ。
そもそも私にも薬の知識がないうえに玲ちゃん以上にいつ消えるかも分からない体質だけで少数精鋭のマトリに入るなんて都合が良すぎるので期待はしていなかったが。
そこまで説明されてもやっぱり自分が特殊な体質ということがピンと来ない。
薬効体質を研究していた由井さんには興奮気味に体質のことを語られたが、なんだか他人の話みたいに感じた。
「薬効体質って言っても、知らない人から見たらただの内定決まらない就活生だしなぁ…」
軽くため息をつきながら家の近くの山道を歩く。
今日はこの近くの会社の面接に行ったのだが…面接官の表情を見る限り内定は絶望的そうだ。
「早く仕事見つけないとなぁ」
そう私が呟いた時
「…にゃー……」
後ろからか細く小さい声が聞こえた。
.