第2章 prolog
就活を続けて早数ヶ月。
会社を回って十数件。
内定は……ゼロ…。
「はぁ〜…」
就職希望の会社からのメール。
内容は『泉透様』と私の名前に続いて長ったらしい文章、そして最後に『お祈り申し上げます』
これで一体何回目だろう。
「またダメだった……」
両親の元を離れ、埼玉の大学に通うために一人暮らしを始めたのももう4年ほど前のこと。
もうすぐ卒業を控えているというのに、私は未だに働き口を見つけられないでいた。
ため息をつきながらとぼとぼと家への道のりを歩いていく。
「なんでこうなっちゃったんだろ…玲ちゃんに憧れて私もあんな社会人になりたいって思ってたはずなのに」
玲ちゃん、とは私の従姉妹。
薬剤師からマトリへの大出世を決めたエリート。私の憧れの人。
優しくて正義感溢れる自慢の家族。
聞くところによると『マトリ姫』なんてあだ名で呼ぶ人もいるらしい。
玲ちゃんは恥ずかしそうに話してくれたが、それすら愛らしかった。
……それに比べて私は。
「就職先も決まらず、恋人もいない……」
玲ちゃんが姫なら私はまさに平民。
平凡で、特にこれといった取り柄もない。
「私はお姫様じゃない…」
自分で言ってて悲しくなってきた。
恋したことないわけじゃない。
恋に憧れていないわけでもない。
むしろ憧れすぎているのかもしれない。
周りは大人になり普通に恋愛をしているのに、私は未だに少女漫画のような恋を夢み、そして現実に向き合えないでいた。
せめて従姉妹のようなバリバリのエリート社会人になりたかったのかもしれない。しかし、現実は非常でそれすら上手くいかずこの有様だ。
「本当、どうしたらいいんだろ…」
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