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【短編集】慟哭のファンタジア【HQ】【裏】

第1章 王子と気まぐれ姫(菅原孝支)


「それで?これ以上の昇格はないの?」
緊張していたのだろうか、やっとさんに軽口を叩けた。
「王様になったら、私より偉くなっちゃうからダメ」
「なんだそれ…」
くすくすとお互いの顔を見ながら笑った。
「菅原くんは、私のどこが好きなの?」
なんだ突然、と言うと、腕におさまった寂しがり屋は見上げてきた。
「…なんとなく」
これは答えないと拗ねるやつだな、と長年の付き合いで察して、恥ずかしいと思いながらもどう言葉にするか考えた。
「他の人には気を遣って媚を売るくせに、俺にはしないところ」
「つかってるよ!」
「どこが」
「もう!ほかは?」
「俺にしか我が儘言わないところ」
「…M…」
否定したかったのに、出来なかった。
「さんは…?」
「…私のお願い、全部叶えちゃうところ…」
むすっとしながら、胸から声が聞こえる。
「あとは?」
「…私がお願いするまで、指一本触ってこないところ」
「あとは?」
「もう!ぎゅっとして!」
「…は?いいけど」
「………こういうとこ……」
さんは、俺の顔を全く見てくれない。
自分に余裕がなくなると、すぐこうやって逃げたり隠れたりする。
それは、凄く可愛くて、たまに切なくて。
そして絶対に自分にしか見せない姿だ。
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