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【短編集】慟哭のファンタジア【HQ】【裏】

第36章 主よ甘き日々を終わりまで7(烏養繋心)


シャワーをしてもらいながらぼんやり考える。
拒絶されるのが怖くて逃げていることを。
それでも、この、嘘かもしれない私への行動に、どんどん好きがとまらなくなっていってて。
また目を瞑っていると頬に手を充てさせられる。
手のひらと甲にキスされる。
そんなことも、嬉しくて。
私も同じことをしたいなと思いながら、せめて寄りかかった。



学校の帰り道に繋心さんを見掛けた。
今から部活かと思って話し掛けようと思ったら一緒に誰かいて、慌てて出した手を引っ込めた。
なんとなくどんな人か気になってそのまま見ていたら、綺麗な女の人と一緒だった。
公園の夕日をバックに繋心さんの笑顔がすごく綺麗。
私には、見せたことない…。
楽しそうにその人と話す様子を見ていたら、心臓がきゅって掴まれたような感じがした。
鼻の奥がつんと痛くなる。
そこでやっと、泣きそうになっていることに気付いた。

何を傷ついてるんだろう。
私は、助けてもらっただけの同居人なのに。
(学校卒業する前に、出よう…)
これ以上悲しい思いする前に。

スーパーのバイト中もあの光景が頭から離れなくて、ずっとぼーっとしてしまった。
先輩に少しだけ怒られてしまい、頭を下げて謝った。
「珍しいね、どうしたの?」
と聞かれ、説明できずにいた。
でも、自然に涙が溢れてしまって先輩がぎょっとして慌てて休憩室に連れて行ってくれた。
「もしかして、この前言ってた人となんかあった?」
「……っ」
肯定も否定も出来ない。
何も進んでいないし、振られたわけでもない。
ただ、そこにいられるのは私じゃなかっただけの話。
「今日はもう帰ろうか」
「す、すみません…」
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