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【短編集】慟哭のファンタジア【HQ】【裏】

第27章 蜂蜜レモネード7(及川end)


帰宅したのは、深夜3時近くだと言うのに、は起きていた。
眠そうな目を擦りながら、廊下で待ち伏せていた。
「………」
「………」
何て言ったらいいかわからず、二人で沈黙する。
「徹さん…」
初めて会った時から、は俺をそう呼ぶ。
何故かそれが、凄く、好きだった。
久々に会ったは、こんなに綺麗だったかと、一瞬思う。
薄暗い廊下だから、余計にそう見えてるだけだろうか。
「おじさまたちに聞こえちゃう、入って」
腕を引かれ、半ば強引にの部屋に入る。
整えられ、少ない物が綺麗に整頓されている。
他の女の子の部屋は、もっとごちゃごちゃしてたから、皆そうなんだと思っていた。
「もう、話すことはないんだけど」
「あ、あるよ、いっぱい…!」
は、いつからこんなに明るい口調で話したんだっけ。
これもトビオちゃんのお陰か、なんて、イライラしながら思った。
「私には、徹さんしか、いないから……」
その小柄が、優しく腰に抱きついてくる。
「私のこと、全部わかってくれるの、徹さんしか…っ!
いないんだからね…!!」
「…っ」
あんなに酷いことまでしたのに、彼女はここまで健気に自分を待っていてくれた。
……自惚れて、いいんだろうか?
「……っ」
自ら傷つけたその背中にそっと手を回す。
「ごめんなさい…!
私より、徹さんのが、沢山傷付いてる…!」
彼女はそう言うと、俺の代わりに、涙をぽろぽろと流した。
真珠のように月明かりに輝くそれは、本当に美しい。
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