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【短編集】慟哭のファンタジア【HQ】【裏】

第24章 姫君の憂鬱3(菅原孝支)


相変わらずでかい流行りのモダンハウス。
ほぼ新築なうえに、生活感がほぼない。
荷物を持ってそのままリビングに向かった。
ダイニングテーブルには、数種類のレトルト食品と一緒にメモが置いてあった。
『今日も何も出来なくてごめんね、お誕生日おめでとう』
と書いてあった。
(あんまりだ……)
そして、やっと彼女の今日の態度に納得がいった。
とは言っても、こういうのに慣れているんじゃかいかとも疑問に思った。
何年もこんな生活だと、ぼやいていた記憶があったからだ。
彼女はその食品とメモを全部ゴミ袋に入れ、きゅっと口を縛る。
そして、綺麗に盛り付けされたコンビニ食品を並べていく。
正直、これがさっき買ったものと思えないくらい、どっかのレストランで出されても気付かないほど綺麗に皿に乗っていた。

「いただきます」
割り箸を渡され、向かいの席に座ったさんは両手を合わせて冷たく言った。
「あ、いただきます…」
遅れて自分もそれに従う。
「えっと…、盛り付け、すごいな…。
普段料理したりすんの?」
「あんまり…」
「そ、っか…」
ヤバい、思ったよりも落ち込んでいるようで、会話が続かない…。
話してくれるのを待とうと思ったが、限界かもしれない。
最初の一言に戸惑っていると、さんは飲み物を出してくれた。
「今朝、ね、久々に、パパとママが揃っているのを見たの」
唐突に話されたのは、恐らく原因だろう。
相槌もすることなく、黙って聞くことにした。
彼女も、独り言を言うようにだったから…その方がいいだろうと思ったから。
「よかった、誕生日くらいは、覚えててくれたんだ、なんてね、期待してた……。
なのに、言われたことは、
『どっちについてくるの?』
という話だけ。
何年も私にこんな思いさせておいて、それで、勝手に、どうする?だって。
ごめんね、の一言もないし、何も、誕生日にそんな話を…っ、しなくても、いいじゃない…!!」
さんがドンとテーブルを叩くと、呆気なく割り箸は折れた。
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