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kagero【気象系BL】

第8章 淫雨


「もう…ワケ分かんないわ…」

ようやく笑いが治まった俺を見て、松潤は呆れた顔をしながらパイプ椅子に座った。

俺も、すぐ隣の椅子に腰を下ろす。

「ごめ~ん。だってさ、この歳になって追っかけっこって、俺らヤバくない?」
「俺ら、じゃなくて、相葉くんが、だろ?」
「え~っ!?松潤だって、ノッてくれたじゃん!」
「ノッたわけじゃないし!」

怒った表情だけど、頬がほんのり緩んでて。

それはポーズだってわかった。


だって、20年ずっと一緒にいるんだもん。

それくらい、俺にだってわかるよ。


「やっと、笑った…」

思わず手を伸ばして松潤の頬に触れると、ビクンと震えて。

瞳の中に怯えた色が広がる。

「な、なんだよ…」
「だってさ…ここんとこずっと、笑ってなかったよ?」
「…んなこと、ねぇし。さっきもちゃんと笑顔だったろ」
「あれは、仕事用でしょ?アイドルスマイル。本当の松潤は、笑ってなかったよ」

なるべく刺激しないように、優しく聞こえる声を意識して出すと、ふいっと目が逸らされる。

「…そんなこと、ない…」
「あるよ。誤魔化せると思ってんの?ずっと、20年…ううん、もっと長く…松潤を見てきたんだよ?俺たち」

そう言うと、ゆっくりと逸らされた視線が戻ってきて。

再び出会った瞳は、ゆらゆらと揺れていた。


まるで、迷子になった子どものように



あ…そっか…

迷子になってるんだ…

心が


リーダーのこと、好きすぎて

でも、リーダーの気持ちが離れようとしてて

どうしていいか、わかんなくなってるんだよね?

そうでしょ…?



「…相葉くん…?」

その瞳をジッと見つめ返してると、松潤の瞳が大きく揺らぐ。

俺はもう片方の手も伸ばして、両の頬を包み込むと。

ゆっくり笑顔を作った。

「ねぇ…話して?俺に。松潤の、本当の気持ち…」



俺が

ちゃんと聞くから



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