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【短編集】【HQ】純情セレナーデ

第8章 言の葉の音に(西谷夕)


「そこ、、わかるか?」
「すみません、聞こえませんでした」
「…ったく…いい加減授業くらい聞けよ…」
先生に悪態をつかれて、代わりの人が指される。
いつものことだけど、申し訳なくなる。
(せめてこっち向いて話してよぉ…!)

幼い頃から片耳が難聴気味で、たまに声が聞こえなくなるのが悩みだった。
高校に上がってから加速して、今辛うじてある程度聞こえる、という微妙なラインである。
微妙すぎて支援も受けられず、学校も支援学級に異動出来ず、致し方なく普通学級を受けているが、そろそろ限界だ。

そんな時に、彼とは出逢った。
「さんて、あんまり聞こえないってマジ!?」
「……うん」
またからかわれるのかな、って覚悟した。
「でもほとんど会話出来てるし、成績いいし、すっげーな!!
聞こえてる俺のがサッパリだもん!!」
「あ、ありがと……」
久々に感じた賑やかさがどことなく嬉しい。
「こんくらいの声なら聞こえんの?」
「うん、隣だし、口でもわかるから」
「そっか!!じゃあ次当てられたら、俺が聞いとけばいいんだな!!」
名案、というように両手を叩いた。
「誰だ!大声で話してんのは!?」
「はい!!さーせん!」
クラス中が笑って、空気が一気に和んだ。
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