• テキストサイズ

華の剣士 2 四獣篇

第2章 異変


「ハヨン、何を見ている」

「リョンヘ様」

帰路の途中、野原でみなが休息をとる間、ハヨンは燐の方へじっと視線を凝らしていた。


「何やら胸騒ぎがするのです」

ハヨンはリョンヘに視線を向けてそう言った。


「胸騒ぎ?何か不安なことでもあるのか」

リョンヘは訝しむ。滓との同盟も無事に結び終えた。これで謀反を画策していたものも行動を控えるだろう。そうハヨンとリョンヘは話し合っていたのだ。城内の風向きは良い方へと変わるのではないのか。


「わかりません」

ハヨンはゆるゆるとかぶりを振った。

「何かはわからないのですが、不安にかられるのです。正体がわからないのでさらに…」


「あまりそう悪い方へ考えてはいけない。このところ城内は不穏すぎた。そのせいでお前も悪い方へと考えてしまうのだろう。」

「はい」

そのとき立ち込めていた暗雲から、雨が降ってきた。ずっと降らずに耐えていたのに、我慢しきれなかったような、そんな雨だった。すぐに雨足は強くなる。


「皆のもとへ戻ろう」

「はい」

ハヨンは踵を返したリョンヘを慌てて追う。

夏の生暖かい風が一瞬ハヨンの首もとを撫でていった。
/ 210ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp