• テキストサイズ

華の剣士 2 四獣篇

第10章 形単影隻


「何で俺らがこうやってるかわかってねぇみたいだな?さっきも言ったが、お前はこうやって蔑まれる存在なんだ。」


白虎は自分を組み敷いている少年を睨み付けた。


「ああ、気持ち悪い…。この髪、この目、牙…。何でこんな化け物が人間と一緒に暮らしているのかわかねぇ。それに生意気にも俺たちに食って掛かってきやがって…」


そう言いながら白虎の髪を引っ張った。白虎は首が曲がった痛みと、頭皮に走る鈍い痛みに耐える。そして睨み付けるのをやめなかった。


少年はその態度が気に食わなかったらしい。白虎の頬を平手で打つ。白虎は顔を地面にぶつけた。

「もうやってらんねぇ。俺たちに何も言えなくなるぐれぇやっちまえ!」


他の少年が縄を持ち出してきて、白虎の自由を奪う。白虎は今までにない痛みに、涙が出そうになったが、じっとこらえた。


しばらくしていればおさまると思っていたが、白虎の衣服があちこち破れて、少年があるものを見つけてしまった。


「なんだこれは?」


それは白虎がひたすら隠してきた尻尾だったのだ。少年達が尻尾だと気づいたとき、彼らは一瞬顔を凍らせた。


「…こいつ、本当に化け物だったのかよ…」


その少年達が白虎を忌々しげにみた表情が、後にも先にも、白虎にとって一番耐えがたいものとなるのだった。


そして、白虎はこの孤児院での生活の終わりを迎えたことを知った。それは孤児院という箱庭で生きてきた者にとっては、自分の世界から追い出されると言うことに等しい。度重なる心への負荷に、白虎は壊れてしまったのだった。


/ 210ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp